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執筆者の写真nemuridorinagai

ヌイグル・コンプレックス。


突然ですが、わたしはヌイグルミが好きです。 相当好きです。 かなり好きです。 これがないと全く人生が変わっていただろうな、というくらい。 3歳のころ祖父に買ってもらった ニャンコロ コロミ というヌイグルミが今も家に住んでおります。

 作りかけの ちさ と ニャンコロ・コロミさん

転勤族だった親の仕事の都合で、わたしの家族は、姉が中学2年生に上がるまで3年に一回引越しをしていました。 引っ越す度にご近所との関係は刷新され、したがって幼馴染というものができ辛く、

小学生の間は、外の友だちより姉妹で遊んで過ごした時間を濃厚に記憶しています。 ゴミ捨て場ごっこ、ヌイグルミごっこ、ジェニーちゃん人形の洋服をつくったり、レゴもやりましたし、絵を描いたり、3人で本を作ったり雑誌を作ったり‥ なかでもヌイグルミごっこは、レギュラーメンバーができ、キャラクターが確立され、スズラン村という居住場所の設定ができ(当時住んでいた家の近くにスノー・フレークが咲いていて、それが綺麗だ、というので決まった気がする。)それぞれのキャラクターに対応した暗黒面的存在悪役キャラや、ご先祖様(お姫様だったり王子様だったり…)の設定まででき、何年も続きました。 想像力で、こども部屋からどれだけ面白く遠くまで飛べるか。 狂的なあそびの集中力が途切れて発想が散漫になるまで、わたしたちはこども部屋で、公園で、たびたび訪れる黄金の時間を生きていました。 玩具は新品を買ってもらうと古いものに飽きたり、こども部屋には流行り廃りが出るものですが、どういうわけかこのヌイグルミは新しいものが来ても飽きることはありませんでした。 新しいものを買ってもらったとしても、それらは、どうしたってクタビレ始めたニャンコロコロミを掌に乗せたときの重さ、擦り切れたボアに唇で触れた感触、汗や涙や妹のヨダレまで吸って縮んだ綿の匂い(時々お風呂には入れていましたよ!)、姉妹で喧嘩した時も家出した時も叱られた時もどんな時も自分側についてくれることへの信頼感…、彼女との「時間」と「友情」を凌駕することはなく、結局わたしはいつもニャンコロコロミを握りしてめて遊んでいました。 (‥その後、思春期ヌイグルミ封印時代を経て、20歳で人形劇に遭遇し、「人形と一緒に生きてく大人・人形遣い」を志しますが、その話はまたいつか‥)

ちさ の原寸図。作る前に方眼紙に一応こういうのを書きます。

コゲタ 原寸図

原寸図 上に乗せて大きさを見ながら縫ってゆきます。なぜかニャンコロコロミがいるのは…賑やかしです。

そんなことから個人的人形史が始まっているためか、わたしは人形を作るとなると、自然とヌイグルミを作りたくなってしまうようです。

人形劇文化というものの中には、色んな人形が存在します。 複雑な機構を持つ糸操り人形、文楽をはじめとする大きな胴串人形、テレビ人形劇などでおなじみのロッドパペット(棒人形、ヨーロッパではワヤンと呼ばれているようです。)影絵人形、マペット(セサミストリートの口パクパクする奴)、仮面や、着ぐるみなど、形式の種類を挙げるとキリがないくらい。。。

それらの中でヌイグルミにそのまま持ち手をつけた人形は、遣いも比較的初心者でもとっつきやすいですし、構造も比較的単純なところから始められます。 ‥つまり。 人形劇界において、ヌイグルミ劇人形は、比較的専門技術的地位が低く見られがちなタイプである、と言えると思います。

パッと人形を出したときに、相手の反応が「これぞ専門的技術性のある劇人形!こやつ、プロフェッショナル…、出来るな!!」とならず、「ん?ヌイグルミだしてきたけど‥このオンナノコ‥、あ、人形大好きなんだね(笑)」となることが多い…😭

遣いの人形というより、愛玩の人形 の印象が強いためでしょうか。 動かすとなると、機構が単純な分、遣い手の腕前次第で生きる生きないが大きく別れる!!!(究極、全てのタイプがそうなんですが)、ということを、遣いをやって何年かたって気がつくのですが…、

東京で活動再開当初は自分の作った人形への愛慕と劣等感の混合体でした。 ‥ということを人形遣いの師匠に話したら、 「あなたが人形を差別してどーするの!!」 と言われ、目からウロコが吹っ飛びました。

(そうだ、わたし自身がヌイグルミをコンプレックスに感じてるんや・・・)

お師匠さんは、片手から胴串から、糸あやつりから、ヌイグルミから、本当にいろんな人形を遣ってきた人で、その言葉がとんでもなく説得力を持っていたんですね。 「生きた人形を遣うのに、形式を超えて技術や真髄は共通するところがあるだろう、

そうなると人形の形式は関係ない。」

人形遣いが人形を恥じてどうするのか。

人形美術家が人形を恥じてどうするのか、と。

今回はボディも衣装も手縫い。時間はかかりますが、布の柔らかい動きが出ます。

身体の重さと釣り合いのとれた力で身体を支えるのが一番美しい。 骨格と重心の関係、 歩いた時に足の裏を感じられているか。。。 身体の勉強を始めると出会う教えたちは、殆どそのまま遣う人形の身体の運動にも置き換えられます。

(相違点もあります。彼らには筋肉や内臓はないから) ヌイグルミにも、そう。 柔らかくて骨はないですが、骨格と重心はあるんです。 身体も人形の身体も、まだ知り得てないことがたくさんあると思います。

だから、もっと知りたい。

ちさ と コゲタ 完成後。

さて、NE R I project.「海辺のちさ」 の人形たちですが、例によってヌイグルミの集団であります。 こどもの頃、ひとりでに動きだして欲しくてたまらなかった、話しかけて欲しくてたまらなかったヌイグルミたちを、大人になったいま、作って遣っております。 コドモダマシではなく、彼らとどこまでやれるのか。

大人の方もこどもさんにも嬉しんでもらえる人形を遣えるか。 彼らと作品をやれること、恥じることなく胸を張っていられるか。

さて、初日まで、追い込み、頑張ります。

NERI project.『海辺のちさ』、創作進んでまいります!

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現状、16日(土)16:30の回が人気高めのようです。

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NERI project. 『海辺のちさ』6/14~16 @MURIWUI屋上劇場(祖師谷大蔵)

北井あけみ×長井望美×横手ありさ

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